「実家を売ろうと思って、不動産会社に査定を頼んだら3社で査定額がバラバラだった」
こういう話はよく聞きます。最高額と最低額が1,000万円以上違うこともあります。なぜそんなに差が出るのか、そして「高い査定を出した会社に任せれば得か」というと、必ずしもそうではないのが不動産売却の難しいところです。
この記事でわかること:
- 机上査定と訪問査定の違いと、どちらを使うべきか
- 何社に査定を依頼すれば良いか
- 高額査定の罠——なぜ業者は高い金額を出すのか
- 信頼できる担当者を見極めるポイント
宅建士(不動産の国家資格)として、また大家として複数の不動産取引を経験した立場から、査定の仕組みと注意点をお伝えします。
この記事を読むことで、「査定額に踊らされず、本当に信頼できる業者を選ぶ」方法がわかります。
不動産査定の2種類——机上査定と訪問査定
本格的に売るなら訪問査定まで進む必要があります。机上査定はあくまで「おおよその目安」であり、実態に近い金額は現地を見てもらわないと出ません。
① 机上査定(AI査定・簡易査定)
物件の住所・築年数・面積などの情報をもとに、実際に現地を見ずに算出する査定です。ざっくり言うと「データだけで弾き出した大まかな金額」です。
- 手軽にすぐ金額を知ることができる
- 現地の状況(傷み・リフォーム状況・周辺環境)が反映されない
- あくまで「おおよその目安」
一括査定サイト(スーモ売却・イエウール・ホームズ売却など)で複数社に同時依頼するのは、主にこの机上査定です。
② 訪問査定(現地査定)
実際に担当者が現地に来て、建物の状態・日当たり・周辺環境・間取りなどを確認したうえで出す査定です。
- より実態に近い金額が出る
- 担当者の力量・会社の方針によって差が出やすい
- 売却を本格的に検討する場合はこちらが基本
「相場感を知りたいだけ」なら机上査定、「実際に売る準備をしたい」なら訪問査定——この使い分けが基本です。
何社に頼むべきか
3〜4社への訪問査定依頼が適切な目安です。1社では比較できず、5社以上では対応に疲弊します。
| 依頼社数 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 1社 | 手間が少ない | 金額の妥当性がわからない |
| 3〜4社 | 比較でき、相場感がつかめる | 対応に多少の手間がかかる |
| 5社以上 | より多くの情報が得られる | 電話・訪問の対応が大変 |
大手・中堅・地元密着型を組み合わせて依頼すると、バランスよく情報が集まります。地元密着型は周辺の成約情報を多く持っており、意外と参考になる査定を出してくれることがあります。
「3〜4社から話を聞いて、担当者の誠実さと説明の丁寧さで選ぶ」が実践的な判断基準です。
なお、不動産業界に精通した宅建業者の知人に聞いたところ「自分なら40社に見積もる」との話でした。業界人であれば訪問なしの机上査定をメインに、個人的なネットワークで素早く情報を集められるため可能なことです。一般の方が40社に対応しようとすると電話・訪問・営業圧力だけで疲弊してしまうので、現実的な目安として3〜4社をおすすめします。
「高額査定の罠」——なぜ業者は高い金額を出すのか
査定額は「この金額で売れる」という保証ではありません。高い査定を出して契約を取り、後から値下げを求めるパターンが業界によくあります。
不動産会社が高い査定額を出すのは、「このくらいで売れると思う」という予測の場合もありますが、「とにかく媒介契約(売却を任せてもらう契約)を取りたい」から意図的に高い金額を出すケースもあります。
媒介契約を取った後、売れないまま期間が経過すると「値下げしましょう」と言ってくる——これが「高額査定の罠」です。
見抜き方
| チェックポイント | 注意のサイン |
|---|---|
| 査定額の根拠 | 「周辺の成約事例」を具体的に示せない |
| 値下げへの姿勢 | 「まず高めに出して様子を見ましょう」という提案 |
| 販売活動の説明 | どこに・どのように広告を出すか不明確 |
| 担当者の対応 | 急かすように契約を求める |
「なぜこの査定額になったのか、根拠を教えてください」と聞いたとき、周辺の成約事例(実際に売れた価格)を具体的に示しながら説明できる業者かどうかが、大きな判断基準です。
高い査定額より「根拠のある説明ができるかどうか」で業者を選んでください。
大家視点の業者選びと売却の流れ
複数の物件取引を経験して感じるのは、担当者個人の力量と誠実さが結果を大きく左右するということです。
初回の訪問査定の際に確認しておきたいこと:
- 売り出し価格と「実際に成約が見込める価格」を分けて説明してくれるか
- 売れなかった場合の対応策(値下げのタイミング・幅の考え方)を話してくれるか
- 「買取」と「仲介」のどちらが向いているかを提示してくれるか
- レインズ(不動産業者が物件情報を共有する国のシステム)への登録状況を確認できるか
買取 vs 仲介
- 買取:不動産会社が直接購入。早く確実に売れるが、価格は市場価格の60〜80%程度になることが多い
- 仲介:不動産会社が買い手を探す。市場価格に近い金額で売れる可能性があるが、数ヶ月〜1年以上かかることがある
査定から売却までの大まかな流れ
- 机上査定で相場感を把握
- 3〜4社に訪問査定を依頼
- 査定結果と担当者の説明を比較して媒介業者を選ぶ
- 売り出し価格を決定・販売活動スタート
- 内覧対応
- 購入申込・価格交渉
- 売買契約(手付金の受領)
- 決済・引き渡し
売り出しから成約まで、郊外の戸建てでは3〜6ヶ月かかることも珍しくありません。焦りから値下げを急いでしまう前に、余裕をもったスケジュールで動くことが大切です。
まとめ
- 査定には「机上査定」と「訪問査定」があり、本格的に売るなら訪問査定を3〜4社に依頼
- 高い査定額は必ずしも「良い業者」を意味しない。根拠を説明できるかを確認
- 担当者の誠実さ・説明の丁寧さで業者を選ぶ
- 急がず余裕をもったスケジュールで動くことが損をしないコツ
まずは一括査定サイトで机上査定を取って相場感をつかみ、そのうち2〜3社に訪問査定を依頼するところから始めてみてください。「査定だけお願いして断ることもできる」と知っておくと、気軽に動き始めやすくなります。
税務・法律に関する個別の判断は、税理士・弁護士・不動産の専門家にご相談ください。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
📖 Kindle本:『訪問リハビリで見た、老後の住まいの「正解」と「嘘」』(¥500 / KU読み放題対象)
売却