親御さんの介護が始まると、ケアマネジャーという人が登場します。
ケアプランを作り、サービスを手配し、事業所と連絡を取ってくれる人。関係は、そこから何年も続きます。
でも、ご家族はこう思っているはずです。
この人が「いいケアマネさん」なのか、よく分からない。
当然です。比べる相手がいないからです。多くの家族にとって、ケアマネジャーは「人生で初めて出会う、たった一人のケアマネ」です。
病院勤務の時代から数えると、私は理学療法士として100人を超えるケアマネさんと組んできました。 同じ利用者さんを、別の職種として一緒に担当する立場です。
家族からは見えないところが、こちらからは見えます。 今日はその話をします。
この記事の結論
- ケアマネさんを見るとき、資格や経験年数はあまり参考になりません
- 見るべきは「行動」です。連絡の速さ、家に来る頻度、聞き方
- 特に大事なのが「本人と家族、両方の話を聞いているか」
- 他職種の意見を、プランに反映してくれるかも大きな差です
- 「合わない」と感じたら、ケアマネは変えられます(言い出しにくい人が多いだけ)
- ⚠️ ただし、ケアマネさんは1人で何十人もの利用者さんを担当しています。忙しさと能力を混同しないでください
1. 資格や経験年数は、あまりアテになりません
「主任ケアマネだから安心」「ベテランだから大丈夫」——これはあまり関係がありません。
私が見てきた限り、信頼できるかどうかは、経験年数とほとんど相関しません。 2年目でも見事に動く方はいますし、20年目でも書類を回すだけの方はいます。
元の資格(看護師、社会福祉士、介護福祉士など)による得意分野の違いはあります。
| 元の資格 | 得意になりやすい領域 |
|---|---|
| 看護師 | 医療的な管理、病院との連携 |
| 社会福祉士 | 制度の活用、家族関係の調整 |
| 介護福祉士 | 生活動作、現場のこまかい配慮 |
でもこれも傾向にすぎません。 苦手分野を自覚して、他職種に聞ける人のほうが、結果的にうまくいきます。
だから、見るべきは肩書きではなく、行動です。
2. 信頼できると感じる5つの行動
① 連絡が返ってくる
いちばん地味ですが、いちばん大きいです。
信頼できる方は、その日のうちに何らかの返事をくれます。 「確認して折り返します」の一言でも構いません。止まらないことが大事です。
私たち他職種も同じで、返事が来る方には相談しやすくなります。 相談が増えれば情報が集まり、プランの精度が上がる。好循環が起きます。
逆に返事が遅いと、こちらも「まあ、次の訪問のときでいいか」と後回しにします。その積み重ねが、支援の質の差になります。
② 家に来て、本人を見ている
ケアマネジャーには月1回以上の訪問(モニタリング)が義務づけられています。 これは制度上の決まりです。
大事なのは回数ではなく中身です。
| 見ている方 | 玄関や廊下を歩きながら見る。前回との違いに気づく |
| そうでない場合 | 座って話して、書類にサインをもらって帰る |
「前より動きにくそうになってますね」——こういう一言が出る方は、本当に見ています。
私たちPTは月に何度も伺うので変化に気づきますが、月1回で気づける方は、見る目があります。
③ 本人と家族、両方の話を聞いている
ここが最大の差だと思っています。
在宅介護では、本人の希望と家族の希望が食い違うことが頻繁にあります。
- 本人は「まだ自分でできる」
- 家族は「もう危ないから、やめてほしい」
どちらかだけの話を聞いてプランを作ると、必ずどこかで壊れます。
信頼できる方は、両方の言い分を聞いたうえで、着地点を探します。 そして「お母様はこうおっしゃっていましたが、ご家族としてはどうですか」と、ちゃんと橋を架けてくれます。
⚠️ 家族が遠方にお住まいの場合、本人の話だけで進みやすくなります。 遠方の方は、電話でもいいので自分から連絡を入れることをおすすめします。
④ 他職種の意見を、プランに反映してくれる
これは家族からは見えにくい部分です。
私が「この方、そろそろ手すりが必要です」と伝えたとき——
| 反映される | 次の訪問で、実際に話が進んでいる |
| そうでない場合 | 「わかりました」で終わり、次に会っても何も変わっていない |
専門職の意見を集めて形にするのが、ケアマネジャーの中核の仕事です。ここが機能していると、利用者さんの状態が実際に良くなります。
家族から見分けるヒント:サービス担当者会議で、それぞれの職種にちゃんと発言を振っているかを見てください。仕切りのうまさが、そのまま連携の質です。
⑤ できないことを、できないと言う
意外に思われるかもしれませんが、これは信頼の証です。
介護保険には、できることとできないことがあります。「それは制度の対象外です」「その工事は保険では出ません」——はっきり言ってくれる方のほうが、あとで揉めません。
曖昧なまま進めて、あとから「保険が使えませんでした」となるのが、いちばん困ります。
代わりに「保険外ならこういう方法があります」まで出してくれる方は、かなり信頼できます。
3. ⚠️ 忙しさと、能力を混同しないでください
ここは公平に書いておきます。
ケアマネジャーは、1人で何十人もの利用者さんを担当しています。
その一人ひとりに、家族がいて、事業所があって、書類があります。単純に、時間が足りていません。
だから——
- 返事が半日遅れた
- 訪問がいつもより短かった
この程度で「ダメなケアマネ」と判断するのは、早すぎます。
見るべきは「たまたま忙しかった」のか「いつもそうなのか」です。3か月見て、それでも同じなら考える——くらいの間隔がちょうどいいと思います。
そしてこちらが伝え方を工夫するだけで、動きが変わることも多いです。その話は別の記事に書きます。
4. 合わないと感じたら、変えられます
ケアマネジャーは変更できます。 そして理由を細かく説明する必要もありません。
多くの方が知らないか、知っていても言い出せずにいます。
手順
- 地域包括支援センター、または別の居宅介護支援事業所に相談する
- 新しいケアマネジャーが決まる
- 事業所間で引き継ぎが行われる
利用者さんが直接、今のケアマネさんに「変えたい」と言う必要はありません。 包括支援センターが間に入ってくれます。
変えたほうがいいと感じる場面
- 何度伝えても、要望がプランに入らない
- 本人や家族の話を、最後まで聞いてもらえない
- 特定の事業所ばかり勧められて、理由の説明がない
⚠️ ただし、変えれば必ず良くなるとは限りません。 引き継ぎの手間もかかります。まずは伝え方を変えてみるほうが、うまくいくケースも多いです。
5. 最後に、家族の側にもお願いがあります
これは他職種としての、正直な気持ちです。
ケアマネさんは、伝えられていない情報を読み取ることはできません。
- 夜中に転びかけた
- 最近、食事の量が減った
- 家族が仕事で介護の時間が取れなくなった
こうしたことは、言われなければ分かりません。 月1回の訪問と、電話でのやりとりが情報源のすべてです。
「言うほどのことでもないかな」と思ったことこそ、伝えてください。 そこから状態の変化に気づくことが、本当によくあります。
いいケアマネさんに出会えるかどうかは運もありますが、いい関係を作れるかどうかは、家族側にもできることがあります。
まとめ
信頼できるケアマネさんは、こういう行動をします。
- 連絡が返ってくる(内容より、止まらないこと)
- 家に来て、本人を見ている(前回との違いに気づく)
- 本人と家族、両方の話を聞く
- 他職種の意見をプランに反映する
- できないことを、できないと言う
そして——
- 資格や経験年数は、あまりアテになりません
- 1人で何十人もの利用者さんを担当しています。 忙しさと能力を混同しないでください
- 合わないと感じたら、変えられます
親御さんの介護は、何年も続きます。その期間ずっと隣にいるのがケアマネジャーです。遠慮して黙っているより、伝えて関係を作るほうが、結果的に親御さんのためになります。
住宅改修の場面でケアマネさんがどう関わるかは住宅改修の「理由書」は誰が書くのかに、退院のときに何を聞くべきかは退院前カンファレンスで、家族が聞いておくべきことにまとめています。
実家の話全体の進め方は「親の家、どうする?」完全ガイドからどうぞ。
なお、この記事は訪問リハビリの理学療法士として、他職種の立場から見た内容です。制度の詳細や個別の判断は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにご確認ください。
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