手すり設置の基礎知識——どこに・どんな手すりを・介護保険は使えるか 介護リフォーム

手すり設置の基礎知識——どこに・どんな手すりを・介護保険は使えるか

「手すりをつければ安心」——そう思って業者に頼んだら、使いにくい場所についてしまった。訪問リハビリの現場では、こういった話をよく聞きます。

手すりは「どこかにあればいい」ものではありません。実際の動作と体の使い方に合わせた場所・高さ・種類でなければ、転倒予防の効果が半減します。

訪問リハビリで10年以上、毎日のように患者さんの自宅に上がってきた理学療法士として、手すりの基礎知識をお伝えします。

この記事の結論

手すり設置の基礎知識について、結論から先にお伝えします。

  • 優先度が高い場所は5か所:玄関上がり框・トイレの立ち座り・浴室の出入り・廊下と寝室の動線・階段の5か所が最重要です。
  • 「どこかに手をかけながら歩いている場所」が答え:壁に手をついている・家具を伝い歩きしている場所が手すりの最優先設置場所です。
  • 工事不要の据え置き型は体重をかける用途に不向き:固定されていないと倒れるリスクがあります。転倒予防には壁固定タイプが基本です。
  • 介護保険の事前申請を忘れない:工事後に申請しても認められません。必ずケアマネジャーに相談してから進めてください。

以下で、各ポイントを詳しく解説します。


手すりが本当に必要な場所

チェックシートのように「玄関・廊下・浴室・トイレ」と書かれているものを見かけますが、大切なのは**「その人がどこでどう動いているか」**です。

まず確認してほしいのは、**「どこかに手をかけながら移動していないか」**という点です。

壁に手をついている、家具を伝い歩きしている——そういった動作が見られる場所が、手すりの優先度が高い場所です。本人や家族に「どこかに手をかけながら歩いていますか?」と聞くだけで、ほぼ答えが出ます。

優先度が高い5か所

① 玄関の上がり框(かまち)

段差の上り下りで最も転倒リスクが高い場所です。框の横に縦手すり、または「L字型」の手すりが有効です。

② トイレの立ち座り

便座からの立ち上がりは、足腰への負担が大きく転倒リスクも高い動作です。便座の横(利き手側)に縦または斜め手すりを設置するのが基本です。

訪問リハビリの現場ではベストポジショニングバー(高さ・角度を個別に調整できるアーム型の手すり)を使うケースも多く見られます。既存の便座に後付けできるタイプもあり、壁工事が難しい場合の選択肢になります。

③ 浴室の出入り・立ち座り

浴槽をまたぐ動作・浴槽内での立ち座りは特に危険です。浴槽の縁に沿って横手すりと、立ち上がり用の縦手すりの組み合わせが理想です。床が濡れていることも考慮が必要です。

④ 廊下・寝室への動線

夜間のトイレ移動は暗い中で行われるため、廊下に連続した横手すりがあると安心です。寝室の起き上がりに使うベッド用の手すりも有効です。

⑤ 階段

階段がある場合は必ず両側に手すりが必要です。片側だけでは、降りるときに使いにくい場面が生じます。

もう一つ見落とされがちなのが、手すりの端部の水平延長です。上端・下端で手すりが階段の最後の段を越えて水平に伸びていないと、最後の一歩を踏み出す瞬間に手すりが途切れて体を支えられなくなります。古い家ではこの延長がなく、手すりがぶつっと終わっているものも多いです。リフォームの際は必ず確認してください。

手すりの種類と選び方

横手すり(移動用)

廊下・階段など、移動をサポートするために使います。高さは床から75〜85cmが目安ですが、身長や歩き方によって調整が必要です。

縦手すり(立ち座り用)

玄関・トイレ・浴室など、立ち座りや段差の上り下りに使います。握る位置が使い方によって変わるため、縦に長いものが使いやすいです。

L字型手すり

縦と横の機能を兼ね備えており、トイレ・浴室に特に有効です。立ち座りと移動の両方に対応できます。

工事不要のタイプ(突っ張り型・据え置き型)

賃貸物件や壁への工事ができない場合に使えますが、固定されていないため荷重がかかると倒れるリスクがあります。体重をかける用途には不向きです。転倒予防の効果を期待するなら、壁固定タイプが基本です。

介護保険の住宅改修費を使う

要支援・要介護の認定を受けている場合、**介護保険の住宅改修費(上限20万円)**を使って手すりを設置できます。自己負担は1〜3割です。

→ 介護保険の住宅改修費20万円を使い切るための基礎知識

使うときの注意点

  • 事前申請が必要です。工事前にケアマネジャーに相談し、市区町村に申請してから着工します。工事後に申請しても認められません。
  • 住宅改修費は一生で20万円まで(同じ家に住み続ける場合)。何度も使えるわけではないので、優先順位をつけて計画的に使いましょう。
  • 要介護度が3段階以上上がった場合、または転居した場合はリセットされます。

費用の目安

工事内容目安費用(工事費込み)
玄関手すり(縦1本)2〜5万円
トイレL字手すり3〜7万円
浴室手すり(複数箇所)5〜15万円
廊下横手すり(数メートル)5〜15万円

費用は業者・材質・施工内容によって幅があります。複数社に見積もりを取ることをおすすめします。

業者選びで気をつけること

訪問リハビリの現場で感じるのは、「とりあえずどこかに手すりをつけた」という状態が意外と多いということです。

使いにくい位置に設置されていると、手すりを使わずに動いてしまい、転倒防止の効果が出ません。

業者を選ぶときは以下の点を確認するといいでしょう。

  • ケアマネや理学療法士と連携して設置場所を決めているか
  • 実際に利用者の動作を見てから提案しているか
  • 介護保険の住宅改修に慣れているか(手続きを代行してくれる業者もあります)

「安いから」だけで決めず、**「その人の動き方に合わせた提案をしてくれるか」**を重視してください。

まとめ

手すりは「あればいい」ではなく、**「その人の動きに合った場所・種類・高さ」**でなければ意味がありません。

迷ったら、ケアマネジャーや担当の理学療法士・作業療法士に相談するのが一番です。訪問リハビリのスタッフは、実際の動作を見た上でアドバイスできるため、最も的確な提案を受けられます。

→ 転倒しやすい家の5つの共通点

税務・法律・医療に関する個別の判断は、税理士・弁護士・医師などの専門家にご相談ください。


著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。

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けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。