「高齢の方から申し込みが来たんですが、貸して大丈夫でしょうか」
賃貸を持っている大家なら、一度は迷う場面です。孤独死、家賃の滞納、亡くなったあとの荷物。心配なことは、いくつも頭に浮かびます。
私は賃貸住宅の大家として、高齢の入居者を受け入れてきました。一人暮らしの方もいます。そして本業は、高齢の方の家を訪問する理学療法士(PT)です。
この記事では、大家とPTの両方の立場から、高齢の方を受け入れるときに確認することと、受け入れてみて実際どうだったかをお話しします。
この記事の結論
- 私の物件では、高齢の入居者を受け入れて、困ったことは特にない。むしろ静かで、トラブルの少ない方も多い
- 入居のときに確認するのは、緊急連絡先、家賃保証会社、体の状態と部屋の相性の3つ
- 緊急連絡先は、ご家族にしてもらっている
- 入居中に体が変わったら、手すりなどは介護保険の住宅改修で工事できることがある。大家の承諾書が必要になる
- 大家が、入居者のケアマネジャーや地域包括支援センターとつながっていることは、ふつうはない。私もない
- 高齢というだけで、断らなくていい。心配ごとには、それぞれ備え方がある
受け入れてみて——困ったことは、特になかった
まず、私自身の話から。
私の物件には、高齢の入居者の方がいます。一人暮らしの方もいます。入居してから年を重ねていく中で、大家として困ったことは、今のところ特にありません。
むしろ感じているのは、静かに暮らしている方が多く、トラブルが少ないということです。
もちろん、これは私の物件での話で、すべての高齢の方がそうだとは言えません。ただ、「高齢だから大変」というイメージほどには、困ることは起きていない。これが、受け入れてきた大家としての実感です。
大家が一般的に何を心配しているのか、孤独死・滞納・残置物の3つについては「高齢者は本当に賃貸を借りられない?」で詳しく書いています。
入居のときに確認する3つのこと
① 緊急連絡先
何かあったときに、連絡が取れる人がいるか。私の物件では、高齢の方の場合、ご家族を緊急連絡先にしてもらっています。
体調をくずしたとき、連絡が取れなくなったとき、大家や管理会社が最初に頼れるのは、この連絡先です。名前と電話番号だけでなく、どういう関係の方か、近くに住んでいるかも聞いておくと、いざというときに動きやすくなります。
② 家賃保証会社
家賃の滞納が心配なら、家賃保証会社に入ってもらうのが基本です。高齢の方でも入れる保証会社はあります。保証会社が入っていれば、滞納の心配は大家が一人で抱えるものではなくなります。
③ 体の状態と、部屋の相性
ここは、PTとしての視点です。
高齢の方の場合、その部屋で、無理なく暮らせるかも見ておくと安心です。
| 確かめたいこと | 理由 |
|---|---|
| 階段の上り下り(2階以上の部屋の場合) | エレベーターがない建物では、足腰が弱ると外出が減りやすい |
| 玄関の段差 | 上がりかまちが高いと、靴の脱ぎはきで転びやすい |
| お風呂の出入り | 浴槽をまたぐ高さは、年とともに負担になりやすい |
これは、断るためのチェックではありません。1階の部屋が空いていればそちらを案内する、手すりが必要になったらどうするかを先に話しておく。そういう、住み続けてもらうための確認です。
入居中に、体が変わったら
長く住んでもらえば、入居中に体が変わることもあります。
私の物件では、今のところ高齢の入居者から「手すりをつけたい」といった相談を受けたことはありません。ただ、もし相談されたら、知っておきたいことがあります。
- 要介護認定を受けている方なら、介護保険の住宅改修で、手すりの取り付けや段差の解消ができる
- 賃貸の場合、工事には所有者(大家)の承諾書が必要になる
- 床に置くタイプや、突っ張るタイプの手すりなら、壁に穴を開けずに済む。介護保険でレンタルできる
承諾書のことや、退去のときの原状回復の決め方は「賃貸住宅でも介護の住宅改修はできる」にまとめています。
大家は、入居者のケアマネを知らない
もうひとつ、大家として気づいたことがあります。
高齢の入居者が介護サービスを使っていれば、その方にはケアマネジャー(介護の計画を立てる専門職)がいます。地域には、高齢者の相談窓口である地域包括支援センターもあるのです。
でも、大家がそこと連絡を取ることは、ふつうはありません。私も、入居者のケアマネや地域包括と連絡を取ったことはありません。今は困っていないので、それで回っています。
ただ、何かあったときに、大家から福祉の窓口へのつながりは、家族を通すしかないのが実情です。だからこそ、①の緊急連絡先がいちばん大事になります。
国も、この「つながり」をつくる仕組みを進めています。2025年10月からは、改正された住宅セーフティネット法にもとづき、「居住サポート住宅」という認定の仕組みが始まりました。大家と居住支援法人などが連携して、安否の確認、訪問による見守り、必要なときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。一人暮らしの高齢の方を受け入れるとき、こうした仕組みがあることも知っておくと安心です。
私が大家に伝えたいこと——年齢だけで断らなくていい
高齢の方の入居を迷っている大家に、私が伝えたいのはこれです。
高齢というだけで、断らなくていい。
孤独死、滞納、残置物。心配はどれも、ゼロにはなりません。でも、それぞれに備え方があります。緊急連絡先を確かめる。保証会社に入ってもらう。亡くなったときの荷物の扱いを、先に決めておく。
そして実際に受け入れてみると、静かに、きちんと暮らしている方が多い。私の物件では、それが実感です。
空室が埋まらずに悩んでいるなら、高齢の方は、長く住んでくれる大切な入居者になるかもしれません。
入居者が亡くなったときの契約や荷物の扱いは「親が賃貸で亡くなったら、部屋と契約はどうなる?」で解説しています。
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よくある質問
高齢の方の入居で、大家は何を確認すればいいですか?
緊急連絡先、家賃保証会社、体の状態と部屋の相性の3つです。高齢というだけで断る必要はなく、心配ごとにはそれぞれ備え方があります。
緊急連絡先は、何を聞いておけばいいですか?
名前と電話番号だけでなく、どういう関係の方か、近くに住んでいるかも聞いておくと、いざというときに動きやすくなります。体調をくずしたときや連絡が取れなくなったときに、大家や管理会社が最初に頼れるのがこの連絡先です。
入居中に手すりが必要になったら、どうすればいいですか?
要介護認定を受けている方なら、介護保険の住宅改修で、手すりの取り付けや段差の解消ができます。賃貸の場合は、工事に所有者(大家)の承諾書が必要です。床に置くタイプや突っ張るタイプの手すりなら、壁に穴を開けずに済み、介護保険でレンタルもできます。
居住サポート住宅とは何ですか?
2025年10月から、改正された住宅セーフティネット法にもとづいて始まった認定の仕組みです。大家と居住支援法人などが連携して、安否の確認、訪問による見守り、必要なときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。制度の内容は地域によって異なるので、市区町村の窓口で確認してください。
この記事のまとめ
- 高齢の入居者を受け入れて、困ったことは特にない。静かでトラブルの少ない方も多い
- 入居のときは、緊急連絡先・家賃保証会社・体の状態と部屋の相性を確認する
- 緊急連絡先はご家族に。関係や住んでいる場所も聞いておく
- 体が変わったら、介護保険の住宅改修で手すりなどが付けられることがある。大家の承諾書が必要
- 大家と福祉の窓口のつながりは、ふつうはない。2025年10月から居住サポート住宅の仕組みも始まった
- 年齢だけで断らなくていい
制度の内容や、保証会社の条件は、地域や会社によって異なります。管理会社や市区町村の窓口でご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。
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