「もうすぐ認定の更新なんですが、介護度が下がったら、今のサービスが使えなくなるんでしょうか」
要介護認定には、有効期間があります。期間が終わる前に更新の申請をして、もう一度、調査と審査を受けます。そのたびに「介護度が下がったらどうしよう」と心配になる家族は少なくありません。
この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、介護度が下がる理由、下がると何が変わるか、そして結果が合っていないと感じたときの道をまとめます。
この記事の結論
- 更新の申請は、有効期間が終わる日の60日前からできる。期間は原則12か月で、状態によって3〜48か月の範囲で決まる
- 介護度が下がると、使えるサービスの量(限度額)が小さくなる。要介護1以下になると、介護ベッドや車いすは原則借りられない
- 私が現場でときどき見るのは、下がってサービスの回数を減らさなければならなくなる場面
- 合っていないと感じたら、区分変更か審査請求(結果を知った日の翌日から3か月以内)という道がある
- ただ、私がいちばん伝えたいのは、下がる=悪いこととは限らないということ
まず、なぜ介護度が下がるのか
更新のときも、新しく申請したときと同じように、認定調査(調査員が家に来て、体の動きや暮らしの様子を聞き取る)と、主治医の意見書をもとに審査されます。
介護度が下がる理由は、大きく3つです。
| 理由 | どういうことか |
|---|---|
| 体が良くなった | リハビリや治療で、歩く・立つ・トイレなどが、前より自分でできるようになった |
| 調査の日だけ、がんばった | 調査員の前で、親が「できます」と言ったり、いつもよりがんばって動いたりした |
| ふだんの困りごとが伝わらなかった | 夜中のトイレ、日による調子の波、物忘れなどが、調査や意見書に十分に書かれなかった |
1つ目なら、喜んでいいことです。2つ目と3つ目なら、実際の様子と結果がずれていることになります。
下がると、何が変わるのか
介護度によって、使えるサービスの量や種類が変わります。
| 変わること | 内容 |
|---|---|
| 使えるサービスの量 | 介護度ごとに、1か月に保険で使える上限(区分支給限度額)が決まっている。下がると上限が小さくなり、デイサービスやヘルパー、リハビリの回数を減らす必要が出ることがある |
| 借りられる福祉用具 | 要支援1・2と要介護1は、介護ベッドや車いすなどが原則として借りられない(例外的に認められる場合もある) |
| 相談の窓口 | 要支援になると、ケアプランを作るのは原則として地域包括支援センターになり、担当が変わることがある |
| 入れる施設 | 特別養護老人ホームは、原則として要介護3以上が対象 |
借りられる道具・買う道具の分け方は「介護保険で買える道具、何から買う?」にもまとめています。
現場から——回数を減らさなければならなくなる
訪問リハビリで、更新のあとに介護度が下がった利用者さんを、ときどき見ます。
そのとき困るのが、サービスの回数を減らさなければならなくなることです。上限が小さくなったぶん、今までどおりのデイサービスやヘルパー、リハビリをすべて続けると、上限を超えてしまう。超えた分は全額自己負担になるので、どれかを減らすことになります。
本人や家族にとっては、「やっと慣れてきたのに」という気持ちになりやすい場面です。
道① 下がった理由を、ケアマネに確かめる
結果に驚いたら、まずケアマネジャーに、なぜ下がったと思うかを聞いてください。
- 体が良くなったから、なのか
- 調査や意見書に、ふだんの様子が伝わらなかったから、なのか
ここがはっきりすると、次に何をすればいいかが決まります。体が良くなったのなら、今の介護度に合わせて、サービスの組み方を見直すのが自然です。
道② 合っていないなら「区分変更」
実際の様子と結果がずれていると感じたら、区分変更(介護度をもう一度判定してもらう申請)ができます。区分変更は、有効期間の途中でも、いつでも申請できます。
ただし、申請すれば必ず上がるわけではありません。状態が変わっていなければ、同じ結果になることもあります。申請する前に、ケアマネジャーと「何がずれていたか」を整理しておきましょう。
区分変更を出すタイミングは「区分変更はいつ出すか」にまとめています。
道③ 結果そのものに不服なら「審査請求」
認定の結果そのものに納得できないときは、都道府県の介護保険審査会に審査請求ができます。
- 期限は、結果を知った日の翌日から3か月以内
- 原則として書面で出す
- 結果が出るまで時間がかかることが多い
区分変更で判定し直してもらうか、審査請求をするか。どちらがいいかは、ケアマネジャーや市区町村の窓口に相談してください。
更新の前に、家族ができること
結果のずれを防ぐには、更新の前の準備が大切です。
- 認定調査に、家族が同席する 本人が「できます」と言っても、家族が「ふだんはこうです」と補えます
- 困りごとをメモしておく 夜中のトイレの回数、転びそうになった日、日による調子の波などを、日付つきで書いておく
- 主治医に、ふだんの様子を伝えておく 更新の前の受診で、家での困りごとを伝えておくと、意見書に反映されやすくなります
調査の日の伝え方は「認定調査の日、親は「できます」と言う」にまとめています。
私が伝えたいこと——下がる=悪いこととは限らない
制度の話をしてきましたが、理学療法士として、いちばん伝えたいことがあります。
介護度が下がるのは、悪いこととは限りません。
リハビリを続けて、立つ・歩く・トイレに行くことが自分でできるようになった。その結果として介護度が下がったのなら、それは親が元気を取り戻した証拠です。
サービスが減ることばかりに目が向くと、せっかく良くなったことを喜べなくなってしまいます。まずは「動けるようになったね」と、親と一緒に喜んでください。
そのうえで、もし実際の様子と結果がずれているなら、区分変更などの道を使えばいいのです。
ケアマネに聞く、ひとつの質問
結果が出たら、ケアマネジャーにこう聞いてみてください。
「今回下がったのは、良くなったからですか、それとも伝わっていなかったからですか?」
この一言で、喜ぶべきか、手を打つべきかが分かります。
よくある質問
更新の申請は、いつから出せますか?
有効期間が終わる日の60日前から申請できます。期間が終わるまでに申請しないと、新しく申請し直すことになるので、早めに準備してください。多くの場合、市区町村から更新の案内が届きます。
介護度が下がったら、今使っている介護ベッドはどうなりますか?
要支援1・2と要介護1になると、介護ベッドは原則として借りられなくなります。ただし、状態によっては例外的に認められる場合があるので、ケアマネジャーに相談してください。
区分変更をしたら、逆に下がることはありますか?
あります。区分変更は「もう一度判定する」申請なので、上がることも、同じことも、下がることもあります。申請する前に、ケアマネジャーと状態を整理しておきましょう。
審査請求は、いつまでに出せばいいですか?
認定の結果を知った日の翌日から3か月以内です。原則として書面で、都道府県の介護保険審査会に出します。
この記事のまとめ
- 更新は有効期間が終わる日の60日前から申請できる
- 介護度が下がると、サービスの量が減り、要介護1以下では介護ベッドや車いすが原則借りられない
- 合っていないなら、区分変更(いつでも)か審査請求(3か月以内)
- 更新の前に、調査への同席・困りごとのメモ・主治医への相談
- そして、下がる=悪いこととは限らない。良くなったのなら、まず一緒に喜ぶ
区分変更はいつ出すか——認定が「合っていない」と気づく4つの場面転んで骨折した、認知症が進んだ。それなのに要介護度は前のまま。介護保険の認定は、更新を待たずに見直しを申請できます。訪問リハビリの理学療法士が、…
参考:埼玉県「介護保険に関する処分に対する審査請求」(2026年10月22日確認)
認定の有効期間や手続き、福祉用具の扱いは、市区町村・年度で異なります。窓口やケアマネジャーでご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。
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