「業者さんから見積書が届いたんですが、これで合っているのか、どこを見ればいいのか分からなくて」
介護保険で手すりや段差の工事をするときは、工事の前に、市区町村へ見積書を出して申請します。見積書は、申請に使う大事な書類です。でも、専門用語と数字が並んでいて、家族が見ても何が書いてあるのか分かりにくいものです。
この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、また大家として工事の見積もりを取ってきた立場から、住宅改修の見積書で、家族が工事の前に確かめたいところをまとめます。
この記事の結論
- 見積書は、工事の前の申請に使う。だから、中身を確かめるのは申請の前
- 見るところは4つ。「一式」になっていないか、手すりの長さ・型番があるか、どこに付けるかが分かるか、対象外の工事が混ざっていないか
- PTとして一番見てほしいのは、金額より「どこに、どの高さで付くか」
- 比べるなら、同じ内容で、2〜3社から見積もりを取る
- 分からないところは、工事の前に業者やケアマネジャーに聞く
まず、見積書はいつ、何に使うのか
介護保険の住宅改修は、次の流れで進みます。
ケアマネジャーに相談
↓
業者が家を見て、見積書を作る
↓
理由書と見積書をそろえて、市区町村に事前申請
↓
市区町村の確認が済んでから、工事
↓
工事のあとに、領収書や完成写真を出して支給申請
見積書は、申請の前にそろえる書類です。申請してしまうと、中身を直すのに手間がかかります。見積書を受け取ったら、申請の前に一度目を通す。これがいちばん大切です。
申請に使うもう1つの書類、理由書については「住宅改修の理由書は誰が書く?」にまとめています。
見るところ①|「一式」になっていないか
見積書でまず見てほしいのは、「手すり取付工事 一式」のように、まとめて書かれていないかです。
自治体の案内でも、たとえば三重県伊賀市は、改修の場所ごとに商品名・部材の単価・数量・取付の費用を細かく書くよう求めていて、「○○工事一式」という書き方は認めていません。
| 分かりにくい書き方 | 分かりやすい書き方 |
|---|---|
| 手すり取付工事 一式 | トイレ壁 縦手すり 長さ600mm 1本 |
| 段差解消工事 一式 | 玄関上がりかまち 踏み台設置 1か所 |
「一式」だと、何本付くのか、どこまでが料金に入っているのかが分かりません。複数の業者を比べることもできなくなります。
見るところ②|手すりの長さ・太さ・型番が書いてあるか
手すりは、長さや太さ、メーカーと型番まで書いてあるのが理想です。
自治体によっては、見積書に商品や部品の定価まで書くよう求めているところもあります(東京都町田市など)。どの商品を使うのかが分かる見積書なら、家族も工事の前に確かめられます。
- 長さ(例:600mm、800mm)
- 太さ(例:直径35mm)
- メーカーと型番
- 何本付けるか
これが書いてあれば、「思っていたより短い」「太くて握りにくい」といったことを、工事の前に確かめられます。
見るところ③|どこに、どの高さで付くかが分かるか
ここが、理学療法士としていちばん見てほしいところです。
見積書の金額や型番が正しくても、付ける場所と高さが、本人の動き方に合っていなければ、手すりは使われません。
私が訪問で伺ったお宅では、業者が「一般的な高さ」で付けた手すりが、その方の体の使い方と合わず、結局つかまらずに生活されていたことがありました。
見積書に場所や高さが書かれていなければ、業者に次のことを確かめてください。
- どの場所の、どの壁に付くのか(トイレの右の壁、玄関の上がりかまちの横など)
- 床から何cmの高さか
- 縦か横か
できれば、本人に実際に動いてもらいながら、「ここにつかまりたい」という場所を一緒に決めるのがいちばんです。担当の理学療法士や作業療法士がいれば、見積書を見せて意見を聞いてもかまいません。
手すりの位置の考え方は「手すり 設置場所と種類の選び方」にまとめています。
見るところ④|介護保険の対象外の工事が混ざっていないか
住宅改修で介護保険の対象になるのは、手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、引き戸などへの扉の取替え、洋式便器などへの取替え、そしてそれに伴う工事です。
業者によっては、対象外の工事も一緒に見積書に入っていることがあります。たとえば、壁紙の張り替えや、手すりと関係のない修理などです。
対象外の工事を一緒に頼むこと自体は問題ありません。ただ、どこまでが介護保険の対象で、どこからが自費なのかが見積書で分かれているかを確かめてください。分かれていないと、「20万円の枠に入ると思っていたのに、自費だった」ということになりかねません。
比べるなら、同じ内容で2〜3社から
見積書の中身を確かめたら、次は金額を比べる段階です。
私は大家として11年、工事の見積もりを取ってきました。管理する物件で窓の修理の見積もりを取ったとき、地元の工務店が約50万円、大手のリフォーム会社が約130万円と、同じ工事で2.6倍の差がありました。
比べるときのコツは、同じ内容で見積もりを取ることです。
- 手すりの本数・長さ・場所をそろえて頼む
- 「一式」ではなく、細かい内訳を出してもらう
- 金額だけでなく、場所と高さの説明が丁寧かも見る
業者の選び方と見積もりの取り方は「介護保険の住宅改修費20万円、損しない使い方」にまとめています。
私が家族に伝えたいこと
見積書を受け取った家族に伝えたいのは、比べてから決めてほしいということです。
ケアマネジャーに紹介された業者に、そのままお願いするのが悪いわけではありません。ただ、1社だけだと、その見積もりが高いのか安いのか、内容が十分なのかが分かりません。
2〜3社の見積書を並べると、「この会社は手すりの長さまで書いてある」「この会社は一式ばかり」といった違いが、自然と見えてきます。比べることで、見積書の読み方そのものが分かるようになるのです。
よくある質問
見積書は、自分たちで用意するものですか?
いいえ。見積書は、工事をする業者が作ります。家族は、受け取った見積書の中身を確かめて、ケアマネジャーと一緒に申請の準備を進めます。
申請したあとで、見積書の内容を変えられますか?
変えられる場合もありますが、市区町村への変更の届け出などが必要になり、手間がかかります。できるだけ申請の前に中身を確かめてください。工事の内容が変わるときは、必ず工事の前にケアマネジャーと市区町村に相談しましょう。
「一式」と書かれていたら、どうすればいいですか?
業者に、何本・何か所・何mなのか、内訳を出してもらえるよう頼んでください。内訳があれば、ほかの業者と比べることもできます。
見積もりを何社も頼むのは、失礼になりませんか?
工事の見積もりを複数の会社に頼むのは、一般的なことです。「ほかの会社にも見積もりをお願いしています」と伝えておけば大丈夫です。
この記事のまとめ
- 見積書は事前申請に使う。直すなら申請の前
- 見るところは、「一式」でないか・長さ・型番・場所と高さ・対象外の工事の4つ
- PTとして一番大事なのは、本人の動きに合う場所と高さか
- 比べるなら同じ内容で2〜3社。場所と高さの説明が丁寧かも見る
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参考:伊賀市「介護保険住宅改修の注意点」/町田市「住宅改修 必要書類のご案内」(いずれも2026年10月23日確認)
住宅改修の対象となる工事や、見積書の書き方、申請の手続きは、市区町村・年度で異なります。窓口やケアマネジャーでご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。
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