転倒は「つまずき」だけじゃない——PTが見る「ふらつき」の瞬間 介護リフォーム

転倒は「つまずき」だけじゃない——PTが見る「ふらつき」の瞬間

「段差もなくしたし、床も片付けた。それなのに、また転んだんです」

親の転倒を心配して、家の中を整えた家族から、こういう声を聞くことがあります。段差や床の物は、足が引っかかる「つまずき」の原因です。でも、転倒の原因はそれだけではありません。

もうひとつ、見落とされやすいのが「ふらつき」です。足が引っかかっていないのに、体のバランスがくずれて倒れてしまう転び方です。

この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、ふらつきやすい瞬間と、家族ができる工夫をまとめます。

ふらつきを防ぐ家でできる運動4つを、動画(10分)で解説しています。

この記事の結論

  • 転倒には、足が引っかかる「つまずき」と、体がぐらつく「ふらつき」がある
  • 段差をなくす・床を片付けるといった対策は、つまずきには効くが、ふらつきは防ぎきれない
  • 私が訪問の現場で見てきた、ふらつきやすい瞬間は、寝起きと向きを変えるとき
  • 寝起きは、起き上がってからすぐに立たず、しばらく時間をおく
  • 向きを変えるときは、首だけで振り向かず、体ごと、ゆっくり
  • ふらつきが急に増えたときは、体や薬の変化のサインのこともある。主治医に伝える

つまずきと、ふらつきは別のもの

まず、2つの違いを整理します。

つまずきふらつき
どんな転び方か足が段差や物に引っかかって転ぶ足は引っかかっていないのに、体がぐらついて転ぶ
よく起きる場面段差、敷居、カーペットの端、床の物立ち上がった直後、寝起き、向きを変えるとき
効く対策段差をなくす、床を片付ける、明るくする動き方を変える、つかまる場所をつくる、体の状態を確かめる

家の中の転倒対策というと、段差や片付けの話が中心になりがちです。でも、それはつまずきの対策です。ふらつきは、家の形より、体の動かし方と体の状態に原因があることが少なくありません。

現場から——ふらつく瞬間は「寝起き」と「向きを変えるとき」

私が訪問リハビリで見てきた中で、ふらついて転んだり、転びそうになったりした場面は、大きく2つでした。

  1. 起きてすぐ(朝起きたとき、夜中に目が覚めたとき)
  2. 振り向いたとき、向きを変えたとき

どちらも、床に段差があるわけではありません。家がきれいに片付いていても、起きる場面です。家を整えても転ぶときは、動き方のほうに目を向ける必要があります。

ふらつきやすい瞬間①|寝起き

寝ている間、体は横になった姿勢に慣れています。そこから急に立ち上がると、血圧の調整が追いつかず、頭がふわっとして、ふらつくことがあります。立ち上がったときに血圧が下がる「起立性低血圧」と呼ばれるものです。

寝起きは、頭もまだはっきりしていません。夜中にトイレへ急ぐときは、なおさらです。

寝起きの工夫——すぐに立たない

私が現場でいつも伝えているのは、これです。

  • 寝起きは注意する
  • 起き上がってから、すぐに立ち上がらず、しばらく時間をおく

具体的な順番としては、一般的に次の流れがおすすめです。

  1. 目が覚めたら、横になったまま手足を軽く動かす
  2. ゆっくり起き上がって、ベッドの縁に座る
  3. 座ったまま、しばらく待つ
  4. 何かにつかまってから、立ち上がる
  5. 立ったら、すぐ歩き出さず、ふらつきがないか確かめる

夜中のトイレで、どのくらい座って待てばよいかや、トイレまでの道の工夫は「夜間のトイレが一番危ない」にまとめています。

ふらつきやすい瞬間②|向きを変えるとき

もうひとつは、振り向いたとき、向きを変えたときです。

  • 後ろから呼ばれて、首だけで振り向く
  • 台所で、冷蔵庫からコンロへくるっと回る
  • トイレの中で、便座に座るために向きを変える

歩いているときより、向きを変えるときのほうが、体を支える足の位置が変わり、バランスをくずしやすくなります。

向きを変えるときの工夫

  • 首だけで振り向かない。呼ばれたら、立ち止まってから、体ごと向きを変える
  • ゆっくり回る。勢いをつけない
  • 向きを変えることが多い場所(トイレの前、台所、部屋の出入口)には、つかまれる物を置く。置くタイプの手すりもある
  • 家族は、後ろから急に声をかけない。前に回って話しかける

私が家族に伝えたいこと——つまずき対策だけでは防げない

家の中の転倒対策で、私がいちばん伝えたいのは、段差をなくしたり、片付けたりするだけでは防げない転倒があるということです。

段差や片付けは、もちろん大切です。でも、それで「もう大丈夫」と安心してしまうと、寝起きや向きを変えるときのふらつきは残ったままになります。

家を整えたあとは、もうひとつ、親がどう動いているかを見てください。

  • 起きたら、すぐに立ち上がっていないか
  • 呼ばれて、首だけで振り向いていないか
  • 向きを変えるところに、つかまれる物があるか

これは、家族が帰省したときに、少し一緒に過ごすだけで分かります。

あわせて、親の足の爪も見てみてください。爪が伸びすぎたり巻いたりして痛いと、足の指で踏ん張れず、ふらつきにつながることがあります。爪が切れないときの頼み先は「親の足の爪が切れない」にまとめています。

ふらつきが急に増えたら

ふらつきは、年齢のせいだけとは限りません。体調の変化や、飲んでいる薬が影響していることもあります。

  • 前より、ふらつく回数が増えた
  • 起き上がったときに、目の前が暗くなると言う
  • 薬が変わってから、ふらつくようになった

こうした変化に気づいたら、いつ、どんな場面でふらつくかをメモして、主治医や薬剤師に伝えてください。

この記事のまとめ

  • 転倒には「つまずき」と「ふらつき」がある
  • 段差や片付けはつまずきの対策。ふらつきは防ぎきれない
  • ふらつきやすいのは、寝起きと向きを変えるとき
  • 寝起きは、起き上がってからすぐ立たず、しばらく時間をおく
  • 向きを変えるときは、首だけで振り向かず、体ごとゆっくり
  • ふらつきが急に増えたら、場面をメモして主治医・薬剤師へ

家の中のどこが危ないかは「転倒しやすい家の特徴5つ」にまとめています。

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体の状態や、ふらつきの原因は一人ひとり違います。気になる症状があるときは、主治医や担当の理学療法士・作業療法士にご相談ください。

親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。