「実家に帰るたびに物が増えていて、親が転ばないか心配なんです」
「片付けようとすると、『勝手にさわるな』と怒られて……」
親の家の物の多さに悩む家族は、少なくありません。床に置かれた新聞や紙袋、積み重なった段ボール。見るたびにハラハラするけれど、全部を片付けるのは、時間的にも、親との関係的にも難しい。
この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、物が原因の転倒を防ぐために、まずどこを片付ければいいかをお話しします。
この記事の結論
- 私が訪問先で「物が多くて危ない」と感じるのは、廊下・部屋の床、ベッドのまわり、台所やトイレまでの通り道
- 現場で見てきたのは、床に置いた物につまずく場面と、つかまって歩いていた家具が動く場面
- 転倒を防ぐ片付けは、全部やらなくていい。よく通る道だけ空ければいい
- よく通る道は、ベッド→トイレ、ベッド→食卓・台所、玄関の3本から見つける
- 家具につかまって歩いている家では、その家具が動かないか、倒れないかも確かめる
現場から——物が原因の転倒は、こう起きる
物が多くて危ないと感じる場所
私が訪問リハビリで、「ここは物が多くて危ない」と感じるのは、主に次の3か所です。
- 廊下や部屋の床(新聞、紙袋、段ボール、脱いだ服など)
- ベッドのまわり(ティッシュ、リモコン、飲み物、薬の袋など)
- 台所やトイレまでの通り道
どれも、毎日、何度も通る場所です。物が多いこと自体より、通る場所に物があることが危ないのです。
見てきた2つの場面
物が原因で、転んだり、転びそうになったりする場面として、私が見てきたのは大きく2つです。
| 場面 | どういうことか |
|---|---|
| 床に置いた物につまずく | 年を重ねると、足が上がりにくくなり、すり足になりやすい。新聞1部、紙袋1つでも、つま先が引っかかる |
| つかまって歩いていた家具が動く | 手すりの代わりに、たんすや棚、いすにつかまって歩いている。その家具が動いたり、ぐらついたりして、体を支えきれなくなる |
床の物は「つまずき」の原因です。一方で、家具が動く場面は、つかまる場所が頼りにならないという別の危なさです。
私が伝えたいこと——片付けるのは「通る道」だけでいい
親の家の片付けを考えている家族に、私がいちばん伝えたいのはこれです。
全部を片付けなくていい。よく通る道だけ、空ければいい。
家じゅうを片付けようとすると、何日もかかります。親にとっては、大事な物を勝手に動かされることでもあります。途中で親とけんかになり、結局、何も進まなかった——ということにもなりがちです。
でも、転倒を防ぐという目的なら、片付ける場所はずっと少なくてすみます。親が毎日歩く道の上から、物をどけるだけです。
「片付け」と言うと大がかりに聞こえますが、「歩く道だけ空けておこう」と言えば、親も受け入れやすくなります。
よく通る道の見つけ方——3本の線を引く
親が毎日、何度も歩く道は、だいたい次の3本です。
| 道 | 歩く回数・時間帯 |
|---|---|
| ベッド(布団)→トイレ | 夜中も含めて、1日に何度も。寝起きで足元がおぼつかない時間帯にも通る |
| ベッド→食卓・台所 | 毎食。手に物を持って歩くことが多い |
| 部屋→玄関 | 外出のとき。段差もある |
家族が帰省したときに、この3本の線の上に物がないかを見てください。線の上にある物だけを、壁ぎわや棚に移します。
道を空けるときのポイント
- 足元から:床に置いた新聞・袋・段ボール・服をどける
- コード:通り道を横切る電気コードは、壁ぎわに寄せる
- ベッドのまわり:起き上がって座る場所と、立ち上がって最初の一歩を踏み出す場所には、何も置かない
- 夜も見えるように:特にトイレまでの道は、夜中に通る道でもある
夜中のトイレまでの道については「夜間のトイレが一番危ない」にまとめています。在宅酸素のチューブがある家の通り道は「在宅酸素の親の家」にまとめました。
家具につかまって歩いている家は、もうひとつ確認を
道を空けるときに、気をつけてほしいことがあります。
親が、たんすや棚、いすの背もたれにつかまりながら歩いている家があります。家具が、手すりの代わりになっているのです。
この場合、確かめてほしいのは2つです。
- その家具は、体重をかけても動かないか、倒れないか
- キャスター付きのワゴン、軽いいす、背の高い細い棚などは、体重をかけると動いたり倒れたりしやすい
- 片付けで、つかまる場所がなくならないか
- 道を空けるために家具を動かすと、それまでつかまっていた場所が消えることがある
つかまる家具が頼りにならない場合は、床に置くタイプの手すりを使う方法もあります。介護保険でレンタルできることも多いので、ケアマネジャーに相談してみてください。置き方は「置き型手すり、どこに置く?」にまとめています。
よくある質問
片付けは、どこから始めればいいですか?
親が毎日歩く道の上から始めます。ベッド→トイレ、ベッド→食卓・台所、部屋→玄関の3本の線の上に物がないかを見て、線の上にある物だけを壁ぎわや棚に移しましょう。
親が「勝手にさわるな」と怒るときは、どう言えばいいですか?
「片付け」と言うと、大がかりに聞こえます。「歩く道だけ空けておこう」と言えば、親も受け入れやすくなります。
ベッドのまわりで、気をつけることはありますか?
起き上がって座る場所と、立ち上がって最初の一歩を踏み出す場所には、何も置かないようにします。ティッシュやリモコン、飲み物、薬の袋などが足元にないか確かめてください。
家具につかまって歩いているのは、危なくないですか?
キャスター付きのワゴン、軽いいす、背の高い細い棚などは、体重をかけると動いたり倒れたりしやすいです。つかまる家具が頼りにならない場合は、床に置くタイプの手すりを使う方法もあります。介護保険でレンタルできることも多いので、ケアマネジャーや市区町村の窓口に相談してみてください。
この記事のまとめ
- 物が多くて危ないのは、廊下・部屋の床、ベッドのまわり、台所やトイレまでの道
- 物が原因の転倒は、床の物につまずくことと、つかまった家具が動くこと
- 片付けは全部やらなくていい。よく通る道だけ空ければいい
- よく通る道は、ベッド→トイレ、ベッド→食卓・台所、部屋→玄関の3本
- 家具につかまって歩いている家では、その家具が動かないか・倒れないかを確かめる
家の中で転びやすい場所は、物の多さだけではありません。段差や照明など、ほかの原因は「転倒しやすい家の特徴5つ」にまとめています。
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