在宅酸素の親の家——チューブで転ばない通り道と火の注意 介護リフォーム

在宅酸素の親の家——チューブで転ばない通り道と火の注意

「退院したら、家でも酸素を使うことになりました」

心臓や肺の病気で、家で酸素を吸う在宅酸素療法が始まると、家の中に酸素をつくる機械が置かれ、そこから長いチューブで鼻まで酸素を送るようになります。

酸素のおかげで息が楽になり、家での暮らしを続けられる人は、少なくありません。ただ、家の中に長いチューブがある暮らしには、気をつけたいことも出てきます。

この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、在宅酸素を使う親の家で、どこに気をつければいいかをまとめます。

この記事の結論

  • 私が訪問先で危ないと感じてきたのは、チューブが床をはっている、チューブがどこかに引っかかる、火の近くで酸素を使っているの3つ
  • 現場でよくすすめるのは、よく通る道に物を置かない、動くときはチューブを手でたぐること
  • 火は、本人だけでなく家族全員で気をつける。自治体の消防などは、機械の周り2m以内に火気を置かないよう呼びかけている
  • 大切なのは、酸素があっても動ける家にすること。通り道は家族で一緒に決める

在宅酸素とは

在宅酸素療法は、心臓や肺の病気で体に酸素が足りなくなる人が、家で酸素を吸いながら暮らす治療です。

  • 家の中では、空気から酸素を集める機械(酸素濃縮器)を使うことが多い
  • 機械から、細く長いチューブで、鼻につけた管(カニューラ)まで酸素を送る
  • 外出のときは、持ち運べる酸素ボンベを使う

機械は、医療機関を通して業者から借りるのが一般的で、業者が定期的に点検に来ます。

現場から——危ないと感じてきた3つの場面

私が訪問リハビリで、在宅酸素を使う方の家で危ないと感じてきたのは、次の3つです。

場面どういうことか
チューブが床をはっている機械から部屋や廊下まで、チューブが床を横切っている。本人も家族も、足を引っかけやすい
チューブがどこかに引っかかるドア、家具の脚、ベッドの角などにチューブが引っかかり、急に引っぱられる
火の近くで酸素を使っている火を使う場所の近くで、酸素を吸っている

チューブが原因の転倒は、チューブそのものにつまずく場合と、引っかかったチューブに引っぱられて体勢をくずす場合があります。心臓や肺の病気がある人は、少し動くだけで息が切れやすく、ふらつきやすいので、なおさら注意が必要です。

チューブで転ばない、通り道のつくり方

よく通る道に、物を置かない

チューブは、床の上を動きながらついてきます。通り道に物があると、チューブが物にからんだり、引っかかったりします。

  • ベッド→トイレ、ベッド→食卓、部屋→玄関など、毎日通る道の上には、物を置かない
  • 新聞・紙袋・段ボールなど、床に置いた物は壁ぎわや棚へ移す
  • 電気コードとチューブが重ならないようにする

よく通る道の見つけ方は「親の家、物が多くて危ない」にまとめています。

動くときは、チューブを手でたぐる

立ち上がるとき、向きを変えるとき、歩くときは、チューブを手で軽くたぐりながら動いてもらいます。

  • 足元にチューブがたまったまま歩き出さない
  • 向きを変えるときに、チューブが足に巻きつかないようにする
  • 部屋を出入りするときは、ドアにチューブがはさまっていないかを見る

チューブの通し方も、相談できる

環境再生保全機構(国の関係機関)の在宅酸素の案内では、階段や廊下の手すりにフックを付けて、チューブをそわせる方法も紹介されています。床をはわせないだけで、つまずきは減らせます。

チューブの長さや、機械を置く場所は、生活に合わせて変えられる場合もあるのです。酸素の業者や訪問看護に相談してみてください。

火の注意は、家族全員で

酸素そのものは燃えませんが、ものが燃えるのを強く助ける性質があります。酸素を使っている近くで火を使うと、髪の毛や服、チューブに火が移って、大きなやけどや火事につながるおそれがあります。

厚生労働省も、在宅酸素を使っている人が、たばこなどが原因の火事で亡くなる事故が起きているとして、注意を呼びかけてきました。

横浜市の消防などは、次のように呼びかけています。

  • 機械を使っているときは、周り2m以内に火気を置かない
  • 酸素を吸っているときは、たばこを絶対に吸わない
  • 周りで、コンロやストーブなどの火を使わない

火の注意は、本人だけの問題ではありません。家族が近くでたばこを吸う、来客が仏壇に線香をあげる、といった場面もあります。家族や来客にも、酸素を使っていることを伝えておくことが大切です。

私が家族に伝えたいこと

酸素があっても、動ける家に

チューブがあると、「転ぶと危ないから」と、動かなくなってしまうことがあります。でも、動かない時間が長くなると、体力が落ちて、ますます息が切れやすくなります。

チューブがあることを前提に、動ける家をつくる。それが、私が家族にいちばん伝えたいことです。

通り道は、家族で一緒に決める

どこにチューブを通すか、どこに物を置かないかは、本人がよく動く道を見てから決めるのがいちばんです。

帰省したときに、家族で一緒に、本人の1日の動きを追ってみてください。トイレ、食卓、テレビの前、玄関。その道の上に、チューブと物が重なっていないかを見ます。

困ったら、業者や訪問看護に相談する

チューブが長すぎる、機械の置き場所が悪い、と感じたら、我慢せずに酸素の業者や訪問看護に相談してください。生活に合わせて、変えられることがあります。

心不全の親の家の工夫は「心不全の親の家」にもまとめています。

よくある質問

酸素のチューブにつまずかないコツは?

毎日通る道の上に物を置かないことと、動くときにチューブを手でたぐることです。手すりにフックを付けて、チューブを床からうかせる方法もあります。

酸素を使っている部屋で、料理をしてもいいですか?

酸素を使っている近くで、コンロなどの火を使うのは危険です。横浜市の消防などは、機械の周り2m以内に火気を置かないよう呼びかけています。電磁調理器を使うなどの方法もあるので、具体的な使い方は、酸素の業者や主治医に確認してください。

チューブの長さや、機械の置き場所は変えられますか?

生活に合わせて変えられることがあります。酸素の業者や訪問看護に相談してください。自分たちで勝手に延長したり、つなぎ方を変えたりはしないでください。

この記事のまとめ

  • 危ないのは、床をはうチューブ、引っかかるチューブ、火の近く
  • 工夫は、よく通る道に物を置かない、動くときはチューブを手でたぐる
  • 火は家族全員で。機械の周り2m以内に火気を置かない
  • 酸素があっても動ける家に。通り道は家族で一緒に決め、困ったら業者・訪問看護に相談
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酸素の量や使い方、機械の扱いは、主治医と酸素の業者の指示に従ってください。火の取り扱いの注意は、お住まいの市区町村の消防の案内もご確認ください。

親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。