心不全の親の家——お風呂・トイレ・階段、息切れしやすい場所 介護リフォーム

心不全の親の家——お風呂・トイレ・階段、息切れしやすい場所

「退院してから、親がお風呂に入るたびに息を切らしていて」

心不全で入院していた親が家に戻ると、家族はこんな不安を抱えることがあります。病院ではできていたことが、家ではつらそうに見える。でも、どこまで手伝えばいいのか、動かしていいのかもわからない。

この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、心不全の親が家のどこで息切れしやすいかと、家族ができる工夫をまとめます。

この記事の結論

  • 私が訪問先で、心不全の方が息切れしやすいと感じるのは、お風呂(着替え・体を洗う)、トイレ(いきむ・立ち上がる)、階段・坂
  • 現場でよくすすめる工夫は、途中で休む場所をつくる、座ってできるようにする、ゆっくり・分けてする、息を止めない
  • 入浴の目安は、40〜41℃のお湯に、10分程度、鎖骨の下までの深さ(心血管疾患のリハビリのガイドラインより)
  • 家族に伝えたいのは、悪化のサインを見逃さないことと、安静にさせるより、動ける工夫をすること

心不全とは——家族が知っておきたいこと

心不全は、心臓のポンプの働きが弱くなって、体に必要な血液を十分に送れなくなった状態です。少し動いただけで息が切れたり、足がむくんだりします。

心不全は、よくなったり悪くなったりをくり返しやすい病気です。治療で落ち着いても、塩分や水分のとりすぎ、無理な動きなどをきっかけに、また悪くなって入院することがあります。

だからこそ、家での毎日の過ごし方がとても大切になります。

現場から——息切れしやすいのは、この3か所

私が訪問リハビリで、心不全の方が息切れしやすいと感じるのは、次の3つの場面です。

場面なぜ息切れしやすいか
お風呂(着替え・体を洗う)服を脱ぎ着する、かがんで足を洗う、腕を上げて髪を洗う。どれも心臓に負担がかかる動き
トイレ(いきむ・立ち上がる)排便でいきむと、息を止めて力が入る。便座から立ち上がる動きも重なる
階段・坂体を持ち上げる動きが続く。2階への上り下りや、家の前の坂で息が上がる

どれも、ふだんは何気なくしている動きです。でも心不全の方にとっては、「かがむ」「腕を上げる」「いきむ」「体を持ち上げる」が重なると、一気に息が上がります。

家族ができる4つの工夫

私が現場でよくすすめているのは、次の4つです。

1. 途中で休む場所をつくる

廊下、脱衣所、階段の途中、トイレの前など、息が上がりやすい場所の近くに、いすを1脚置いてください。

「休んではいけない」と思って、一気に動こうとする方は少なくありません。途中で座って休める場所があるだけで、無理なく動けるようになります。

2. 座ってできるようにする

立ったままより、座ってするほうが、体への負担は小さくなります。

  • 着替えは、脱衣所のいすに座って
  • 体や髪を洗うときは、シャワーチェア(お風呂用のいす)に座って
  • 靴の脱ぎはきも、玄関に座る場所をつくって

シャワーチェアなどの入浴の道具は、要介護認定を受けていれば、介護保険で購入できる場合があります。ケアマネジャーに相談してみてください。

3. ゆっくり・分けてする

一度に全部しようとせず、動作を分けて、間に休みを入れることが大切です。

  • 体を洗う → 少し休む → 髪を洗う
  • 階段は、一段ずつ、途中で止まって息を整える
  • 家事も、一度にまとめてせず、分けて行う

4. 息を止めない

力を入れるとき、人は無意識に息を止めがちです。息を止めて力むと、心臓への負担が大きくなります。

  • トイレでいきむときも、息を吐きながら
  • 立ち上がるときも、息を吐きながらゆっくり

「力を入れるときは、息を吐きながら」と、家族からも声をかけてください。

お風呂の目安——40〜41℃、10分程度、鎖骨の下まで

心血管疾患のリハビリのガイドライン(日本循環器学会ほか、2021年改訂版)では、入浴について次のような目安が示されています。

項目目安
お湯の温度40〜41℃(熱すぎない)
つかる時間10分程度
つかる深さ鎖骨の下まで(肩まで深くつからない)

熱いお湯に、肩まで長くつかるのは、心臓に大きな負担になります。主治医から入浴について指示が出ている場合は、そちらを優先してください。

私が家族に伝えたいこと

悪化のサインを見逃さない

心不全は、悪くなるたびに入院をくり返すことが多い病気です。そして私は、心不全をくり返すたびに、心臓は少しずつ弱っていくと考えています。だからこそ、悪化のサインに早く気づくことが、何より大切です。

家族に気をつけてほしいサインは、たとえば次のようなものです。

  • いつもより息切れする(同じ動きで、前より苦しそう)
  • 足や顔がむくむ
  • 体重が急に増える(ガイドラインでも、3日間や1週間で2kg以上の体重増加は、体に水がたまっているサインとされています)
  • 夜、横になると苦しくて、体を起こしたがる

こうした変化があれば、我慢させずに、早めに主治医に相談してください。

毎日の体重を測り続けるための、体重計の置き場所は「心不全の親の体重計、どこに置く?」にまとめています。

安静にさせるより、動ける工夫を

心配になると、「無理しないで、寝ていて」と言いたくなります。でも、動かない時間が長くなると、筋力や体力が落ちて、かえって少しの動きで息が切れるようになってしまいます。

大切なのは、動かないことではなく、無理なく動ける家にすることです。休む場所をつくる、座ってできるようにする、分けてする。そうした工夫で、親が自分でできることを続けられるようにしてください。

どのくらい動いていいかは、病状によって違います。主治医や担当のリハビリ職に、目安を確認しておくと安心です。家族が見て分かる目安は「心不全の親、動いていい?」にまとめました。

よくある質問

心不全の親に、お風呂に入ってもらっていいの?

病状が落ち着いていて、主治医から止められていなければ、入浴できることが多いです。ガイドラインの目安は、40〜41℃、10分程度、鎖骨の下までの深さです。主治医の指示がある場合は、そちらを優先してください。

階段がつらそうです。寝室を1階に移したほうがいい?

階段で毎回息が上がるようなら、1階で生活を完結させるのも一つの方法です。寝室を移すかどうかの考え方は「寝室が2階のままが一番危ない」にまとめています。

家で酸素を使うようになったときの注意は「在宅酸素の親の家」にまとめました。ペースメーカーを入れた親の家電の注意は「ペースメーカーの親の家」にまとめています。

どんなときに、すぐ病院に連絡すればいい?

いつもより息苦しい、むくみが増えた、体重が急に増えた、横になると苦しいといった変化があれば、早めに主治医に相談してください。強い胸の痛みや、安静にしても治まらない息苦しさがあるときは、ためらわずに救急車を呼んでください。

この記事のまとめ

  • 心不全の親が息切れしやすいのは、お風呂・トイレ・階段
  • 工夫は、休む場所をつくる、座ってできるようにする、ゆっくり分けてする、息を止めない
  • 入浴の目安は、40〜41℃・10分程度・鎖骨の下まで
  • 悪化のサイン(息切れ・むくみ・急な体重増加・横になると苦しい)を見逃さない
  • 安静にさせるより、動ける家に

立ち上がったときのふらつきについては「転倒は「つまずき」だけじゃない」、浴室の手すりの位置については「浴室の手すり、縦か横か」にまとめています。

あわせて読みたい寝室が2階のままが一番危ない——1階に移すのはいつか「まだ階段は上れるから」と、寝室を2階に置いたままの家は多い。訪問リハビリの理学療法士が、先送りしたときに起きる順番と、1階へ移すサイン、本人が…

病状や、どこまで動いてよいかは、一人ひとり違います。必ず主治医や担当の医療職にご確認ください。介護保険で使える福祉用具や住宅改修は、市区町村の窓口やケアマネジャーでご確認ください。

親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。