「最近、びんのふたが開けられないの。ドアノブも回しにくくて」
関節リウマチの親を持つ家族から、こういう話をよく聞きます。関節リウマチは、手や指の関節が腫れたり痛んだりする病気です。進むと握る力(握力)が落ちて、家の中の小さな動作が難しくなります。
握力が落ちても、家と道具の工夫で、できることを保てる場合があります。この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、困りやすい場所と工夫をまとめました。
この記事の結論
- 握力が落ちると、ドアノブ・蛇口・びんのふた・鍵など「ひねる」「つまむ」動作から難しくなる
- 関節リウマチでは、痛い関節に無理をさせないことも大切。力の代わりに、道具と家の形で助ける
- ドアノブはレバー式に変えると、手のひらや腕で押すだけで開けられる
- ドアノブの変更は、介護保険の住宅改修の対象になる場合がある。まずケアマネジャーに相談する
- 手すりは「握る」だけでなく、手や腕を乗せて使える形もある
- 私が訪問先で見かけたのは、太い柄のスプーンや、びん・ペットボトルを開ける道具。小さな道具で、毎日の困りごとが減る
握力が落ちると、家の中で困ること
握力が落ちると、最初に難しくなるのは「ひねる」「つまむ」動作です。
| 困りやすい場所・物 | 難しくなる動作 |
|---|---|
| ドアノブ | 握って、ひねる |
| 蛇口(ひねるタイプ) | つまんで、回す |
| びん・ペットボトルのふた | 強く握って、ひねる |
| 鍵 | 小さな物をつまんで、回す |
| 服のボタン | 細かくつまむ |
| 箸・スプーン | 細い柄を握り続ける |
本人は「年のせい」「手が弱くなっただけ」と思って、家族に言わないことも多いです。ペットボトルを家族に開けてもらうことが増えたら、ほかの場所でも困っているかもしれません。
関節リウマチでは「力を入れない」ことも大切
関節リウマチの場合、筋力が落ちたからといって、痛い関節に力を入れて頑張るのはおすすめできません。 関節に負担をかけると、痛みや変形が進むことがあるからです。
考え方の基本は、次の2つです。
- 小さな関節より、大きな関節を使う。指でつまむ代わりに、手のひら全体や腕で押す
- 力の代わりに、道具と家の形で助ける。ひねる動作を、押す・引く動作に変える
どこまで動かしてよいか、どの関節を守るべきかは、人によって違います。主治医や、手の使い方の専門家である作業療法士(OT)に確認してください。
家の工夫①|ドアノブ・蛇口を「押す・引く」形に
ドアノブはレバー式に
丸いドアノブは、握ってひねらないと開きません。レバー式のハンドルに変えると、手のひらや腕で上から押すだけで開けられます。手の指をほとんど使わずに済みます。
ドアノブをレバー式に変える工事は、介護保険の住宅改修の「扉の取替え」の対象になる場合があるのです。 要支援・要介護の認定を受けていれば、工事費20万円までを上限に、費用の多くを介護保険でまかなえます。工事の前の申請が必要なので、必ず先にケアマネジャーに相談してください。
蛇口はレバー式に
ひねるタイプの蛇口は、つまんで回す動作が必要です。レバー式の水栓にすると、手の甲や腕で上げ下げできます。
ただし、蛇口の交換は、介護保険の住宅改修の対象にならないことが多いです。自費になる場合は、毎日一番よく使う場所(台所や洗面所)から考えると、効果が大きくなります。
家の工夫②|手すりは「乗せて使う」形もある
手すりは「握って使う物」と思われがちです。でも、握力が弱い人や、指が痛い人にとっては、しっかり握ること自体がつらいことがあります。
- 少し太めの手すりは、指を深く曲げなくても手のひらで支えやすい
- 平らな形の手すりなら、手のひらや前腕(ひじから手首まで)を乗せて体を支えられる
- 立ち上がる場所では、手すりを押して立つ使い方もできる
どの形が合うかは、手の状態と、その場所でする動作によって変わります。手すりの位置を決めるときに、「握らなくても使える形はありますか」と、ケアマネジャーや工事の担当者に一言聞いてみてください。
手すりの付け方の考え方は「片麻痺の親の家——手すりは「行きと帰り」で反対になる」でも紹介しています。
道具の工夫——現場で見かけた補助具
家の工事をしなくても、小さな道具で毎日の困りごとが減ることがあります。手が不自由になった人の生活を助ける道具は「自助具(じじょぐ)」と呼ばれます。
私が訪問先で実際に見かけたのは、次のような道具です。
- 太い柄のスプーン・フォーク:細い柄を握り続けなくても、手のひらで包むように持てる
- びん・ペットボトルを開ける道具:ふたに当てて回すだけで、少ない力で開けられる
どちらも、使っている人にとっては「これがないと困る」毎日の道具になっていました。
自助具は、介護保険の対象にならないものが多く、自費で買うのが基本です。値段も手ごろなものが多いので、まずは一番困っている動作に合う道具を1つ試してみるのがおすすめです。どれが合うか迷ったら、作業療法士に相談すると、手の状態に合わせて選んでもらえます。
誰に相談すればいいか
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 主治医 | 病気の状態、どこまで手を使ってよいか |
| 作業療法士(OT) | 手の使い方、自助具の選び方 |
| 理学療法士(PT) | 立ち上がり・歩き方、手すりの位置 |
| ケアマネジャー | 介護保険の住宅改修、福祉用具、リハビリの手配 |
訪問リハビリを使っていれば、PTやOTが家に来て、実際の動作を見ながら一緒に考えられます。まずはケアマネジャーに「手が使いにくくて困っている」と伝えるところから始めてください。
よくある質問
痛くても、手を動かして鍛えたほうがいいですか?
関節リウマチの場合、痛い関節に力を入れて頑張るのはおすすめできません。関節に負担をかけると、痛みや変形が進むことがあるからです。どこまで動かしてよいかは人によって違うので、主治医や作業療法士に確認してください。
ドアノブをレバー式に変える工事に、介護保険は使えますか?
介護保険の住宅改修の「扉の取替え」の対象になる場合があります。要支援・要介護の認定を受けていれば、工事費20万円までを上限に、費用の多くを介護保険でまかなえます。工事の前の申請が必要なので、必ず先にケアマネジャーに相談してください。
蛇口の交換も、介護保険の対象になりますか?
蛇口の交換は、介護保険の住宅改修の対象にならないことが多いです。自費になる場合は、台所や洗面所など、毎日一番よく使う場所から考えると効果が大きくなります。
握る力が弱くても使える手すりはありますか?
少し太めの手すりや、手のひらや前腕を乗せて使える平らな形の手すりがあります。どの形が合うかは手の状態や動作で変わるので、「握らなくても使える形はありますか」と、ケアマネジャーや工事の担当者に聞いてみてください。
太い柄のスプーンなどの道具は、介護保険で買えますか?
手が不自由になった人の生活を助ける道具は「自助具」と呼ばれ、介護保険の対象にならないものが多く、自費で買うのが基本です。どれが合うか迷ったら、作業療法士に相談すると、手の状態に合わせて選んでもらえます。
この記事のまとめ
- 握力が落ちると、ひねる・つまむ動作(ドアノブ・蛇口・びんのふた・鍵)から難しくなる
- 関節リウマチでは、痛い関節に無理をさせない。力の代わりに道具と家の形で助ける
- ドアノブはレバー式に。介護保険の住宅改修の対象になる場合がある
- 手すりは握らずに乗せて使える形もある
- 太い柄のスプーンやふたを開ける道具など、小さな自助具で毎日が楽になる
- 迷ったら、ケアマネジャー・作業療法士に相談する
介護保険の住宅改修の使い方は「介護保険の住宅改修費20万円、損しない使い方」に、転びにくい家の考え方は「転倒しやすい家の特徴5つ」にまとめています。
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