「家の中なんだから、靴下で十分でしょう」
「スリッパを買ってあげたけど、それで大丈夫かな」
親の足元を気にする家族は多いと思います。家の中の履物は、段差や手すりに比べると、つい見落とされがちです。でも、足元は体と床が触れる、たったひとつの場所です。
この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、親の家の中の足元について、現場で見ていることと、室内履きの選び方をまとめます。
この記事の結論
- 私が訪問先でいちばんよく見るのは、靴下だけで過ごしている親世代
- 現場で見てきた履物の危ない場面は、スリッパが脱げること
- 室内履きを選ぶなら、いちばん大事なのはかかとがあること
- あわせて見たいのは、甲で留められるか、サイズが合っているか、底がすべりにくいか
- 選ぶときは、実際に履いて、家の中を歩いてもらってから決める
現場から——靴下だけ、そしてスリッパが脱げる
多いのは「靴下だけ」
私が訪問リハビリで見ている範囲では、親世代は家の中で靴下だけで過ごしていることが多いです。
靴下は、床の素材によってはすべりやすくなります。特にフローリングでは、靴下の底がつるつるだと、立ち上がるときや向きを変えるときに足が流れやすくなります。
見てきたのは「スリッパが脱げる」場面
履物が原因で、転んだり、転びそうになったりする場面として、私が見てきたのはスリッパが脱げることです。
- 歩いている途中で、スリッパが足から抜ける
- 段差や敷居をまたぐときに、スリッパだけが引っかかって脱げる
- 脱げそうになったスリッパを、足の指でつかもうとして、歩き方がぎこちなくなる
スリッパは、かかとがないので、足とつながっているのは甲の部分だけです。足を前に出すたびに、スリッパが脱げないように気をつけながら歩くことになります。
「慣れているから大丈夫」と思いがちですが、脱げないように気をつける分、足元に注意が向いて、まわりへの注意が減ることにもなります。歩くことに精いっぱいの状態で、さらに段差や物に気づくのは、どうしても難しくなるのです。
室内履きを選ぶときは、親の足の指や爪の状態も一緒に見てください。爪が伸びて痛いと、足の指に体重がかけにくくなります。爪が切れないときは「親の足の爪が切れない」も参考にしてください。
靴下・スリッパ・かかと付きの室内履きを比べる
| 足元 | よいところ | 気をつけたいところ |
|---|---|---|
| 靴下だけ | 手軽。足の感覚が伝わりやすい | 床によってはすべりやすい |
| スリッパ | 脱ぎ履きが楽 | かかとがないので脱げやすい。段差で引っかかりやすい |
| かかと付きの室内履き | 足から脱げにくい。歩き方が安定しやすい | 脱ぎ履きに少し手間がかかる。サイズ選びが大事 |
どれが絶対に正解、ということはありません。ただ、歩くときに足から脱げないという点では、かかとのある履物がいちばん安心です。
私が家族に伝えたいこと——室内履きは「かかと」で選ぶ
親の室内履きを選ぶ家族に、私がいちばん伝えたいのはこれです。
室内履きは、かかとのあるものを選んでください。
かかとまで包む履物なら、足と一緒に動いてくれます。スリッパのように「脱げないように気をつけて歩く」必要がなくなり、歩き方そのものが安定しやすくなります。
見た目やかわいさ、暖かさで選びたくなる気持ちは、よくわかる話です。でも、転倒予防の目的なら、まず「かかとがあるか」を見る。それから、ほかの条件を見ていくのが近道です。
選ぶときに見たい4つのポイント
かかとがあることを前提に、次の4つを確かめます。
- 甲で留められるか
- 面ファスナー(マジックテープ)やベルトで、足の甲を押さえられるものは、足にぴったり合わせやすい
- サイズが合っているか
- 「大きめのほうが楽」と思いがちですが、大きすぎると足が中で動き、脱げやすく、つまずきやすくなります
- 底がすべりにくいか
- 家の床(フローリング・畳・クッションフロア)で、すべりにくいかを確かめる
- 重すぎないか、つま先が引っかかりにくいか
- 年を重ねると、すり足になりやすくなります。重い履物や、つま先が床にこすれやすい形は、つまずきの原因になります
この4つを満たしやすいのが、介護用品店や通販でよく見かける、かかとまで包んで、甲をマジックテープ(面ファスナー)で留めるタイプの室内履きです。大きく開くので、足がむくみやすい人でも履きやすいものが多くあります。(Amazonでかかと付き・面ファスナーの室内履きを探す)
実際に履いて、歩いてもらってから決める
いちばん確実なのは、実際に履いて、家の中を歩いてもらうことです。
- 部屋からトイレまで、歩いてもらう
- 敷居や段差をまたいでもらう
- 立ったり座ったり、向きを変えたりしてもらう
そのときに、脱げそうにならないか、引っかからないか、本人が「歩きやすい」と言うかを見てください。
靴下だけで過ごしたい親には
「家の中で何か履くのは窮屈で嫌だ」という親もいます。無理に履かせると、結局脱いでしまうこともあります。
そんなときに使える方法は、次の2つです。
- 底にすべり止めのついた靴下にする
- 歩き回る時間の長い季節や、夜中にトイレに行くときだけでも、かかとのある履物をベッドのそばに置いておく
ふらつきやすい瞬間(寝起き、向きを変えるとき)については「転倒は「つまずき」だけじゃない」にまとめています。
なお、室内履きは介護保険の福祉用具(レンタル・購入の対象)には含まれません。足のむくみや変形があって合う履物が見つからないときは、主治医や担当の理学療法士・作業療法士に相談してください。
よくある質問
かかとのあるスリッパなら大丈夫?
かかとまで包むタイプなら、普通のスリッパより脱げにくくなります。名前が「スリッパ」か「室内履き」かより、実際に歩いて脱げないかで選んでください。
介護保険で買える?
室内履きは、介護保険の福祉用具(レンタル・購入の対象)には含まれません。自分で買うことになります。
サイズはどう選ぶ?
大きめを選ばないことが大切です。足は夕方にむくみやすいので、できれば午後に、実際に履いて家の中を歩いてもらってから決めると安心です。甲で留めるタイプなら、むくみに合わせて調整もしやすくなります。
靴下だけで過ごしたい親には?
底にすべり止めのついた靴下にするのが手軽です。夜中にトイレへ行くときだけでも履けるよう、かかとのある履物をベッドのそばに置いておく方法もあります。
この記事のまとめ
- 親世代は、家の中で靴下だけのことが多い
- 現場で見てきた危ない場面は、スリッパが脱げること
- 室内履きはかかとのあるものを選ぶ
- あわせて、甲で留められるか・サイズ・すべりにくさ・重さを見る
- 選ぶときは、実際に履いて、家の中を歩いてもらう
家の中で転びやすい場所や、ほかの原因は「転倒しやすい家の特徴5つ」にまとめています。
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足の状態や合う履物は、一人ひとり違います。気になることがあるときは、主治医や担当の専門職にご相談ください。介護保険で使える福祉用具の種類は、市区町村の窓口やケアマネジャーでご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。




